オカッツァン
昔ほどではないが、
出雲地方では、
「奥さん」のことを
「オカッツァン」と呼ぶ地域が、
今でもある。
ワタシは就職する以前は、
あまり耳にしたことなかったが、
子供の頃、秋になるとやってくる
行商のオバサンが、
「ΟΟのオカッツァン」
と言っていたような気がする。
今では、「奥さん」が既婚女性を表す最もメジャーな言葉だが、
その昔「奥さん」というと、町なかの名家や裕福な家の既婚女性に対する尊称であったように、
「オカッツァン」もそうだった。
知人は、戦後間もない頃、大社町で働くようになったが、仕事にも慣れ、
外商に出ることになったとき、くれぐれも注意されたことがある。
それは町内の取引先の中で一件だけ、
「決して『オカッツァン』と呼んではいけないところがある」ということだった。
そこだけは、お殿サン、お姫サンだと言われた。
子供の私にも、なんとなく何処のことか察しがついた。
母から聞いた話。
東京から嫁いだ知人女性は、ご主人の生まれ育った町内には、
「おかつサン(お勝、とか、お克、お香都などなど)」という名の女性が、
沢山いるのだと思っていた。ところが、数年後、自分も「おかつサン」になっていた。
「年を取ったからでしょうか」と聞かれた母は、
「さぁ~?」と答えたそうだった。(8月28日)