四里四方(出雲弁の思い出 その③)

おまえ おまえさん 御前

他所から出雲に移り住んだ人にとって、

出雲弁は

8月20日枕木山のアジサイ

8月20日 枕木山では、アジサイが綺麗だった

少なからず障害となる。

 多くの地域で

オマエ」という二人称は、

ぞんざいな言葉で、

初対面の相手を

オマエ」と呼ぶと、

とても乱暴で、

呼ばれた側にしてみれば、

「バカにされた」などと思い、

非友好的な印象を抱くに違いない。

 母の知人は京都の出身で、出雲に嫁いだ方だったが、姑さんからも近所の奥さん達からも

オマエ」、「オマエサン」と呼ばれて、何年も悔しい思いをしたのだそうだ。

 言われたときのシチュエーションにもよるが、事情をよく分かっている者からすれば、

アンタ」より少し丁寧で、親しみと優しさの籠った言葉だと思うから、

むかし、営業で外回りの仕事をしていた頃、取引先のおばあさんが

オマエも、お茶飲んなはい」って言ってくれたときは、

〈かなり信頼されてきたなぁ〉と、嬉しかったものである。「アンタ」の方がよそよそしい。

そういえば、20年あまり前、大津の友人Mと二人で、上津の友人Sの結納をのぞき見に、

Sの婚約者の実家近くで待ち伏せしていたら、その近所の人に

アンタやちゃ、いったいなんですかぁ」と、怒鳴られたことがある。

どうやら結納ドロボーに間違われたようだった。

夜、Sのおとうさんにその話をしたら、

オマエやちゃ、一体なにしとぉやぁ~」とあきれ顔された。

やっぱり、「アンタ」より「オマ」のほうが、温かい。(8月23日)

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