出雲の駅前で店を構え、仕事をしていると、
「旅人」に出会うことが多い。
出雲出身の人が、
「親の顔を見に、」「同窓会で、」とか、
「法事で、」「結婚式で、」という理由で、
遠くから帰省されたりする。
また、「転勤で、」「仕事で3か月ほど、」などという
長期滞在者も、少なくない。
観光客は人数だけ見れば、
最も多い旅人だろう。
「出雲大社に参拝に来ました」
「パワースポット巡りで来ました」など
という旅の目的をよく聞く。
ある春の夕暮れに、
駅前の郵便局に所用で行った時のこと。
「山陰を旅してます」という男性に出会った。
「今日は、どこに行かれましたか。」と問うと、
「美保神社に行ってきました。・・・」と、楽しそうにしゃべり始めた。
美保神社は、私も好きな神社。
出雲にある、他のお社とは、違う佇まいに思える。
そんなことを伝えると、
「確かに、初めて行ったとき、私もそう感じました。」と、旅人も同意してきた。
「でもね、山陰の神社にお参りすると、山陰の人に出会うのが良いんだと思うんですよ。」と、一段と楽しそうにおっしゃった。
私は、当たり前のようなことを楽しげに話す様子が面白く感じられた。その気持ちが顔に出ていたのか、旅の人が、
「言い方が変でしたね。・・・そのぉ、山陰の人はおそらく信心深いと思うんですよ。・・・だから、きっと、この辺りには、目に見えない何かがいっぱいいて、それらの力を感じながら、生活しているのだろうと、・・・。そんな感覚を、山陰に来ると、毎回、経験するんです。・・・町の中でも経験しますが、パワースポットに行くと格別です。
自分自身、山陰に来るときは、おのずと、神経が研ぎ澄まされるような気がします。毎回、期待して、構えてしまうんでしょうね。」
「だから、鬼太郎が生まれ、小泉八雲の怪談が生まれ、出雲大社を代表に、神社が沢山ある。山陰は、絶対、目に見えない何かを、強く感じられるスポットが集まった場所ですよ。」
「あまり、観光客が増えてほしくないですが、・・・。観光客の少なさそうな時を選んで、友達と休みを合わせて、年に一回は訪れてます。」
旅人と別れて帰る道すがら、
私も、信心深い山陰の人の一人なのか、
と自問自答していた。
令和8年4月
かつらのフセ






