出雲の 食 味

キンプグ」のこと

駅の近くの商業地に生まれ育ち、

おかげで、いろいろな物を食べたほうだと思う。

町内に、思い出せるだけで、魚屋3軒、

八百屋が6軒、

牛肉屋、豚肉屋、鶏肉屋が別々にあり、

さらに、毎日、行商の人が来た。

猟友会の知人から、鴨や猪、鹿などの肉が届くこともあった。

 

冬に思い出すのは、

「キンプグ」

近所の魚屋さんで皮が剥がれたフグが安く、

大抵は、父が

「キンプグがあったけん、もらっといたぞぉ」と、

たくさん買ってきた。

 

父は、フグ、カワハギを煮るのが上手だった。

他の料理は母に任せているのに、

自分の好物だったからか、

あっさり味で、おいしく煮てくれた。

ドンブリに山盛りのフグを、皆が好きなだけ食べた。

 

翌日には、煮汁がゼラチン質で固まり、

夜、父の酒の肴になった。

煮凝りのことを「ペロペロ」と言い、

「旨いぞぉ、食べてみぃ」と言って、

私の皿に入れてくれた。

 

「キンプグ」とは、「白サバフグ」のことで、

最近、フグというと高価なモノになった。

若い人たちに、「フグを腹いっぱい食べた」と話すと、

「ウソだ」とか、「ズルい」という言葉が返ってきた。

令和8年2月

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