出雲の 食 味

かつて、冬、出雲の食卓でよく目にしたものの一つに、

   赤貝 がある。

私が幼いころなど、中海産の赤貝が、

叺(かます)という‘ワラむしろ’製の大きな袋に入って、

近所の八百屋に置いてあり、

それを、量り売りで、買った記憶がある。

 

標準和名は「サルボウ貝」というが、

   出雲では「赤貝」で通用する。

 

買って帰った赤貝は、

まず、しっかりと水洗いして、汚れやごみを取り除く。

寒い季節に、どこの母親も素手で、

さぞ冷たい思いをしたことだろう。

キレイになったら、しょうゆ味で煮る。

少し甘みがあったのは、お酒でも入れていたのだろうか。

食べだすと、キリがなくなった。

 

子供のころは、箸がうまく使えなくて、

手を使うから、汁がついて、肘あたりまで痒くなった。

 

中海産を見かけなくなって久しい。

長らく、岡山県の児島産が出回った。

その後、有明産、愛知県産。

最近は、韓国産をスーパーでよく目にする。

 

妻の実母は、赤貝を粕汁にしてくれたそうで、

ときどき、記憶を辿るようにして作ってくれる。

我が家の人気メニューである。

寒い季節、赤貝の粕汁に、身も心も温まる。

令和8年2月

カテゴリー: 四里四方   個別表示

コメントは受け付けていません。