ふつうの道具で素人の遊び
「こだわり」って変なもので、例えば、同じに見える道具をいっぱい所持していたり、
調味料を入れる順番だったり、おおむね他人にはどうでもいいと思えることで、
その反面、当の本人はこだわっているとは思っていなかったりすることもある。
私の「こだわり」は大したことない。
魚をさばくときと、ソバの薬味のネギをきざむ時に
包丁のキレが良ければいいなと思っている程度である。
料理が好きだと言うと、道具や調味料などが
たくさん台所に用意してあると思われるようである。
でも、置く場所もないし、物量的にはまったく多くはない。
ただ、特別なものを強いてあげれば、砥石かな。
大荒~仕上げ(まで、金剛砥石5丁、天然砥石2丁)など
棚の隅に置いてある。時々庖丁を研いでみる。
魚をさばくとき、刺身を造るとき、
包丁のキレで手間も味も違ってくる。
のではないか思うのと、
仕事柄、刃物を研ぐのが好きだからである。
包丁も、使う人の好みがあるから、
個人的な嗜好をここに記すと、
ステンレス包丁は錆びにくくていいが、
研いだ時の切れ味が和包丁に劣ると思う。
ずいぶん前から家にある出刃庖丁と
和包丁2本をよく使う。
奥出雲町のNたたら製の和包丁には
“雲州 幸光”と刻まれてあり、
親戚に貰って使ったら、
加工性(刃のつけ易さ)も、切れ味もよいので、
親戚に頼んで、2本目を買わせてもらった。
(11月6日)
ふだん、我々が仕事に使う日本剃刀(和ぞり)もそうだが、刃物に同じものはない。
玉鋼の性質、地鉄(じがね)の性質が、
製鉄の時、鍛錬の時、炭の出来、気候、
職人の状態などによって決められていく。
我々が同じ砥石で、同じように研いでも、
同じようなキレにならないところが、
刃物は生き物と言われる所以。
我が家の和包丁「幸光」1号に較べると、
2号は鋼が乾いた感じがするが、
それが個性というものである。
2号は荒い砥石を使うと、
刃こぼれすることがあるので
気を使うが、仕上げ砥石で研いだあとのカエリ刃が落ちやすい。
手に入れた順番が逆だったら、きっと1号の鋼が粘りすぎと感じたことだろう。
それぞれ特徴があって面白い。道具の好みも十人十色。
ステンレス包丁の扱いが上手な人は、それを使えばいいと思う。
包丁にこだわらない人もそれはそれでいいと思う。
自分が訳もなくこだわってしまうことの方が変だと自覚している。
変だけど、こだわりってそんなもんだ。
(11月13日)
こだわりと言えば、・・・
お梶の方は「塩です」と答えた
こんな話もある。
私の愛読書R.K氏の時代小説に
徳川家康の側室・お梶の方の
才媛ぶりを伝える
次のようなエピソードが紹介されている。
・・・、或るとき、家康が本田忠勝、
大久保忠隣、平岩親吉と
食べ物の中で一番うまいものは何か
という話題になった。
めいめいがいろんな意見を出して言い争う様を見て、
お梶の方は、家康のそばでクスクスと笑っていた。
家康が、
「何を笑っている。世の中で一番うまいもんは何だと思っているのだ。
存念あらば、申せ。」と言ったが、首を振って答えない。
忠勝たちにはやし立てられて、お梶の方がようやく言った。
「塩です」と。一同意表を突かれ、黙った。
「ならば、一番まずいものは?」家康がまた尋ねた。
「塩です」お梶の方は間髪いれず答えている。・・・
『故老諸談』に載っているこのエピソードは
お梶に方の聡明で合理的な思考を如実に表したものだが、
正確に真実を射抜いているようで、すごーく感心させられる。
塩しだいで旨くもまずくもなる。
塩加減も大切だし、塩自体も大切である。
最近では、スーパーでもいろいろな塩を売っていて、入手も簡単になってきている。
それぞれにうまいのだろうと思うけど、全て味わうわけにはいかない。
たまたま手に入った数種類の塩加減で楽しむのが私のおススメ。
(1月19日)
ワタシの場合・・・
塩の味
塩は、普通の食塩と、
塩冶町のスーパーHに置いてある
天日塩(1kg200円程度)のモノを
買っている。
この天日塩は、初めて買って帰って、
「普通の食塩とどう違うのか?」と、
なめてみたら、
なんとなく海水浴を思い出した。
でも、オーストリア原産の表示があったから、
ワタシの味覚も当てにならぬものだ。
魚には普通の食塩を使う。天日塩を魚に使うと、磯の臭いが甦るようで…。
知人に貰った藻塩もある。15年ぐらい前だったか、隠岐の島ではじめて見かけて買って帰った。
その後、県内各地の藻塩を知人に貰うことが多い。なくなる前に誰かがくれる。
今は、静間の旧友に貰った藻塩がある。
牛肉を焼く前にすり込んだり、友人に教えられて、握り飯に使ったり、豆腐にかけたり、
温野菜にかけたり、と遊んでいる。
(3月9日)
県特産の調味料と言えば、・・・
地伝酒
「ジデン」って使ったことありますか?
ウチでは炒め物、煮物などに
よく使う料理酒。
10数年前だったか?に復活した
出雲地方の赤酒で、
松江のY酒造の作品。
松江の米子町のYショップF川に頼んで
とっておいて貰う。
むかし、松江で野焼を作っていた
父の叔父からよく「ジデン」という
名前を聞くことがあった。
40年近く前、東京のS百貨店の依頼で、一週間の企画に協力し、
一日200本ずつ手作りしたものを送って、過労で患った。
当時、特級酒を練りこんで作った野焼は、子供の私から見ても名品を思わせたが、
そのオジサンはいつも「ジデンがあったらなぁ」と口癖のように言っていたものである。
だから復活したのを知ると、すぐ買い求めた。
いろいろな料理に、ものは試しと思って、使ってみる。
ワタシにとって幻の一品、憧れだった料理酒を、今は切らさぬように手元に置いて使っている。
ソバの出汁、魚の煮物には必ず使っている。野菜の煮しめにも、母は使っているようで、
特にフキと相性バツグンで、ジデンを入れて煮ると最高である(と個人的感想を持つ)。
鶏肉の唐揚げをする前や、照り焼きの前、煮込む前に漬けこんでおいたりして、
いろいろ試してみると面白い。ひと味違うような気がする。(4月10日)