四里四方(出雲弁の思い出 ⑧)

「いかさま」と「さらば」

以前、サラリーマンだった頃、

御碕の黒島の夜明け

宍道湖の夕日もいいけど、                    日御碕の夜明けも大好きだ

塩冶町のあるお宅の担当になり、

そこのおばあさんに用事があり、

訪問したときのことだった。

前回は先輩といっしょに

引き継ぎのためご挨拶に伺っていたが、

一人で訪問するのは初めて、

第一印象が大事、と

笑顔でご挨拶、・・・・・・

営業マンの基本である。

 ところが、そのおばあさんはキョ―レツな出雲弁。

それも、他ではあまり耳にしたことのない、独特の単語を二つ口癖にしておられた。

 

「前任のに替ってお伺いしました」と言うと、

「いかさまぁ」

「今日は新しい商品をお奨めしようと思って・・・・・・」

「いかさま、いかさまぁ」

「一年契約に切り替えられた方がよいかと思います。ご主人は以前から一年契約に・・・・・・」

「いかさま、いかさま、さらばよぉ」

「支店長からも、年金を受給されている方に優先的に切り替えていただくように、

申しつかってまいりました」

「いかさまぁ、さらばよぉ」

 

いかさまさらばよは、帰るまで続いた。

勿論、2語とも古語が残った出雲弁である。

「いかさま」は、“なるほど”の意味。

「さらばよ」は、「それでこそなぁ」とか、「そういうわけかぁ」とか、{やっぱりなあ」。

シチュエーションが違えば、「さすがだなぁ」にもなる。

やっぱり、むずかしいよなぁ、

大田出身の先輩

    「『さらばニョホォ~』っていう面白いおばあさん」 

           って言ったのも無理からぬことだった。

いかさま、さらばよ、他國人には、きっと真意を理解できないだろうが、

ワタシは、はじめて聞いた(と思う)言葉の意味を正確にくみ取ったのである。

 きっと、ワタシが出雲人だから、である。

ここで、

    いかさまぁ、さらばよぉ、 である。(11月16日)

 

 

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