「いかさま」と「さらば」
以前、サラリーマンだった頃、
塩冶町のあるお宅の担当になり、
そこのおばあさんに用事があり、
訪問したときのことだった。
前回は先輩といっしょに
引き継ぎのためご挨拶に伺っていたが、
一人で訪問するのは初めて、
第一印象が大事、と
笑顔でご挨拶、・・・・・・
営業マンの基本である。
ところが、そのおばあさんはキョ―レツな出雲弁。
それも、他ではあまり耳にしたことのない、独特の単語を二つ口癖にしておられた。
「前任のHに替ってお伺いしました」と言うと、
「いかさまぁ」
「今日は新しい商品をお奨めしようと思って・・・・・・」
「いかさま、いかさまぁ」
「一年契約に切り替えられた方がよいかと思います。ご主人は以前から一年契約に・・・・・・」
「いかさま、いかさま、さらばよぉ」
「支店長からも、年金を受給されている方に優先的に切り替えていただくように、
申しつかってまいりました」
「いかさまぁ、さらばよぉ」
いかさまとさらばよは、帰るまで続いた。
勿論、2語とも古語が残った出雲弁である。
「いかさま」は、“なるほど”の意味。
「さらばよ」は、「それでこそなぁ」とか、「そういうわけかぁ」とか、{やっぱりなあ」。
シチュエーションが違えば、「さすがだなぁ」にもなる。
やっぱり、むずかしいよなぁ、
大田出身のH先輩が
「『さらばニョホォ~』っていう面白いおばあさん」
って言ったのも無理からぬことだった。
いかさま、さらばよ、他國人には、きっと真意を理解できないだろうが、
ワタシは、はじめて聞いた(と思う)言葉の意味を正確にくみ取ったのである。
きっと、ワタシが出雲人だから、である。
ここで、
いかさまぁ、さらばよぉ、 である。(11月16日)