Q. 私の髪の毛を切って、
ウィッグを作っておきたいのですが、できますか?
A. できることはできますが、
あまりお勧めいたしません。
「年を取るといずれ髪が薄くなるので、今のうちに髪の毛を切ってウィッグを作っておきたい」とか
「私の毛でかつらを作って、薄毛の母にプレゼントしたい」
「親友が病気の治療(の副作用)で髪が抜けるので、
私の髪の毛でウィッグを作ってあげたい」などなど、
理由はいろいろですが、また、そのお気持ちはよく解りますが、
私どもではお奨めいたしません。
ウィッグの材料として用いる毛の条件としては、
まず第一に、太い直毛であることが挙げられます。
それは、ウィッグの毛として使えるまでにいくつもの工程を経なければならないからです。
ウィッグの毛はキューティクルが除去してあります。
キューティクルがあると、植毛がしにくく、でき上がったウィッグの櫛どおりが悪く、
キューティクルの膠質がやがて腐敗し、
タンパク質独特の腐敗臭が発生することになるからです。
つまり、ウィッグの毛は生毛を一皮むいた状態になります。
ですから、より太い毛でないと、ウィッグの毛として適しません。
従前より、中国華南地方周辺~インドシナ諸国にかけての女性の直毛が1番適しており、
次いで、インドの女性の直毛、イタリアの女性の直毛、・・・とつづき、
日本人女性の毛は、5番目ぐらいにようやく顔を出します。
何度か、お作りしたことはございますが、決まって、
「これが私の髪の毛ですか?」と疑問を抱かれます。
生毛より細くなっていること、また、毛が細いため、生毛よりウェーブが出ることもありました。
人工毛70%:人毛30%ぐらいの混植にするといいのかも知れませんが、
価格的にみても、メリットを感じられません。
「自分の毛の色だから、より自然でしょう。」と言われる方もありますが、
生毛に、108工程(熱処理や薬品処理を繰り返す)とも言われるほど手を加える間に、
ウィッグに適した毛になるころには、本来の毛色はあせて、灰褐色のようになります。
それに染料で色を付けていますから、色合わせしても厳密にいえば、
まったく同じ色ではありませんし、毛染めした自毛と同じく、時間とともに褪色していきます。
30年後には、決して同じ色ではないはずです。
夢のないような話ですが、
「自分の髪を使って・・・」という考えは、実用的ではないのです。
特に、将来に備えても、薄くなる場所が予定通りならいいのですが、
なかなかそういうワケにいかないのが実情。
必要になったときにご相談頂くのがベストだと考えております。