5月。
柿の若葉の緑色は、晴れた日には特に耀いて見える。
八十八夜を迎え、出雲は新茶の季節。
小高い山の傾斜地に、茶畑が点々とある。
「唐川茶」というのが、出雲では有名。北山にある名刹「鰐淵寺」の近くに唐川地区があり、この辺りで収穫されたものを、「唐川茶」というのである。
唐川のお茶は、緑茶、番茶に加工される。
出雲で“番茶”と呼ばれるものは、一般的には“ほうじ茶”と称されるものだと聞いたことがある。
出雲では、特にその“ほうじ茶”ならぬ“唐川番茶”がよく知られており、私はその茶葉を急須にたっぷり入れて、熱いのを頂くのが好きである。
番茶も良いが、5月は新茶製造が盛んになる。
お茶の若葉、若芽を摘み取って、緑茶を作る。
前年のお茶は、古茶となる。
ただ、「新茶の季節になると、古茶もまたおいしくなる。」
昔、父の友人のお茶屋のオジサンに聞いた受け売りだが、確かにおいしくなる気がする。
新茶は、香りと、鮮やかな緑色を楽しむもので、味は、古茶が良い。
これは、個人の嗜好で、人それぞれだろう。
よその緑茶の事情は知らないが、
出雲の緑茶は、出雲産の茶葉をベースにして、宇治、静岡、八女、などの産地の茶葉をブレンドして作られると、私は聞いている。
友人が所有する山でも、お茶を作っていて、その葉だけで作った緑茶を何度も頂いたことがある。素朴で野性味があり、私の家では、毎年楽しみにしていた。ただ、お茶屋さんで買う緑茶とは違う。
お茶屋さんでブレンドされたものは、甘みと渋味のバランスが整い、味に安定感がある。
父の友人のお茶屋のオジサンは、毎年この時期になると、
「今年のお茶は、・・・」と、ダメ出しをしていた。
ある年は、7月になって、「ようやくうちの味に近づいた。今年は、静岡がだめでねぇ。津和野のお茶を使ったら、いい味になった」と言って来られたこともある。自分の店に味になるまで、2~3種類の茶葉をブレンドして、毎年「今年のお茶は、・・・」と言うのだった。
ブレンドしたお茶に慣れているからか、お茶の産地の名前が入った「○○茶」というのは、なんとなく味気なく感じる。原材料表示を見ても、一つの産地しか書いておらず、素朴さは感じるが、面白みに欠ける気がする。
今年のお茶は、どうだろうか。
五月。お茶が楽しみな季節。
令和8年5月
かつらのフセ





