出雲の 三月

三月は、何となく来て、

何となく去って行く。

 

とりたてて出雲らしい祭りがあるわけでもない。

 

春と言えば、春なのだろうが、・・・。

 

冬から春に、

ゆっくりと日が長くなり、

メジロスズメジョウビタキなどの

小鳥たちの羽色が美しく見えるようになって、

暖かい日には、鳴き声も聞こえる。

 

北山は、陽があたっても、

まだ寒そうに見える。

 

そろそろ、「板ワカメ」の季節。

その昔は、行商のおばさんが、売り歩いた。

 

「ウチは、松江の片句のワカメが好きでねぇ」

「ウチやちゃ、みんなが

御碕(みさき)のが良い』言っとりますわ」

などと、おばあさんたちが、お茶を飲みながら、

毎年毎年、話していた。

どこの家にも、「推し」のワカメがあった。

 

板状に乾燥させた「カスカメ」、「アオサ」も一緒に、

持って来てくれた。

 

わたしは、カスカメを焙って、揉んでご飯にかけて、

しょうゆ味で食べるのが好きだった。

独特の渋味があるのだが、

なぜか、卵かけご飯のような味がして、

だが、他の人に言っても、

きっとわからないだろうと思って、

誰にも言わなかった。

三月、出雲は春めいてくる。

令和8年3月

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