四里四方 (Water)

水道水の話

  高校生の時、初夏、部活動の練習試合で松江に行った時、

水道水を飲もうとして(そのころは、試合中、練習中に

水を飲んではいけなかったが、嗽をするのは許されていた。

先輩と嗽をするフリをして、少しずつ飲む技術を身につけていた)、

その水のマズさに全部吐き出してしまったことがある。

 出雲の水道水のウマさに気づいた16歳の夏だった。

 二十歳の夏休み、出雲に帰ってきて、代官町のあるスナックでアルバイトした時のこと。

私たち大学生のアルバイトは、午後2時に入店し、営業の準備。

掃除が終わるころには汗まみれ。

ノドが渇くと、水道水をグラスに入れては飲んでいると、

大阪から流れてきたバーテンさんに、 「貧乏くさいから水道水なんか飲むなァ

    金をやるからコーラでも買うて来い!」って叱られ、

私はワタシで「水道の水、冷たくってウマいっすよォ。」と言い返す毎日。

出雲人の私にとってはうまい水も、バーテンさんにはうまくない。

これが水が合わないってヤツかぁ、と思っていた。

  ところが、・・・・。

バーテンさん水道水を飲む

煎茶

煎茶をよく飲むも出雲の文化                    これも旨い水のおかげと思う

 

2週間ぐらい経った頃、

アルバイトが2人休んで

コーラを買いに行く時間もない時、

「しゃぁないなぁー」と、

水道水を飲んだバーテンさんの

口をついて出た言葉は、

「ほんま、えぇ水やなぁ。ウソみたいやぁ」

出雲の水道水のウマさを解ってもらいました。

そして、三日後からは、ミネラルウォーターの空き瓶に水道水を入れる作業が始まりました。

バーテンさん曰く、

ミネラルウォーターより水道水のほうがゼッタイ旨い。マスターに言うて決めた。

2本300円貰うてた分を、1本100円にしたら客も喜ぶ。」

たしかに、当時はどこの店に行っても、瓶入りの天然水なるモノが水割り用に出てきたので、

水差しに入れただけの水道水では、酔っぱらいが満足するはずがないわけで、

最善の策だなぁと感心しきりだった。

バーテンさんを軍門に下したようで、いい気分になった私は調子に乗って、

「家(1㎞ほど離れた南本町の住宅街)で飲むよりこっち(代官町)で飲む方が旨いんですよ」

って言ったら、バーテンさんは、

「そらそうやでえ。水がよぉ動いてるもん」。

つまり、繁華街は水を使う量が多いから、水道管に水が淀むことが殆どないからだそうだ。

「せやけど、ここらのモンは、なーんも考えんと旨い水呑んでんねんなぁ」と、・・・。

バーテンさん、私があなたに教えてあげたのです。私には、水のウマさ、解っていました

(12/4)

ところで、・・・

 水がウマいから食いものが旨い

島根の米が旨いのは、世に知れたこと。

磯際

「水辺」 ヒトは水を見ると落ち着く、とか

仁多米みずほ米は有名だけど、

他の地域の米もレベルが高い。

 

出雲のコメ通の人は、よく

「Οωφのコメは旨いことないわねぇ。」

って言いたがるけど、

都会の人たちが聞いたら怒るよ、きっと。

彼らはもっと味が落ちるコメを、

工夫して、・・・。

例えば、

セラミック製の米をおいしく炊き上げる物体を炊飯器に一緒に入れて炊いたり、

寒天食油を加えて炊いたり、水もペットボトルに入ったのを買ってきて使ったりして、・・・

それでも、Οωφのコメをウチで食べさせると、「ゴハンがおいしい」って言うものです。

  以前は、大阪の姉のところにいつも最上級の仁多米を母の里や親せき、

知人に買わせてもらって、送っていました。

「コメだけはおいしいものを食べて欲しい」という親の愛ってヤツだったのでしょうなぁ。

ところが、甥っ子が3歳頃、12月に出雲に来た時のこと、ウチでご飯を食べるなり、

「あぁ、出雲のゴハンはウマいなぁ。」と、しみじみと言った。

それを聞いた母は、大ショック。

だって、ウチは米屋さんで買ったごく普通の「全農」って書いた袋のコメ。

それからは、大阪では炊く水が悪いのだと気づいて、コメを送るのをヤメにしました。

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それから、・・・

 出雲の水は硬すぎない

出雲の水がウマいというのは、

北山に雪が積もった。

北山に雪が・・・、やがて酒水として利用される。

にぎり鮨や蕎麦、

地酒、といった食品が実証している。

また、変わったところでは、

というか、

ワタクシの本業の側面から言うと、

シャンプーのとき、

楽させてもらっているみたいである。

20年以上前よりも、

水道水に施される消毒薬の量が

かなり増えた(水質が変わったのではなく、

法律が変わったところによる部分が大きいそうです)と聞いたので、

消毒薬の塩素を除去するタイプの浄水器を、7年前に店にも家にも設置しました

かつらの人毛は、キューティクルが除去してあり(腐敗防止などの理由で)、

シャンプーの際、自毛よりも滑りが悪くもつれることがあります

でも、当店では毛の傷みが激しい場合にややもつれたことがありますが、

「家で洗うと、もつれるので洗ってほしい」と言って来られたお客さんに

洗うところを見せてあげると、

「同じことをやっているのに、…」

と不思議そうな顔をしていらっしゃいます。

なかには、洗い方が拙い方もありますが、そうでない方がお住まいの地域は、

Ο×Δ川水系の水道水だったり、

同じ市内でも水源から遠い新しい住宅街など

共通の地域的特性があるのでは、と思わせるものがあります

(浄水器をつけたらもつれにくくなったと言われることもあります)。

昔、代官町の近くの繁華街に住んでいた友人が市内の北方の住宅地に引っ越したら、

    「風呂でカラダを洗うとき、石鹸の泡立ちが悪くなった」

って嘆いていたのをよく思い出します。

    「出雲の水」はワタシにとって、

        ビジネスでもプライベートでも強~い味方。

中国山地、斐伊川、出雲平野という風土に生かされているのだなぁ、としみじみ思います。

(2/29)

ところで、…

「斐伊川」って・・・

 子供のころ、木次線のディーゼル車にゆられて、

岩崎

日本剃刀の玉鋼もヒー川の賜物

奥出雲の祖父母のところへ行くとき、

「なんで『ひーかわ?』」って、

よく考えたものだけど、

ちっとも解らなかったナァ。

出雲市の対岸は川郡川町

少し上流の雲南市に斐伊小学校

ずぅーっと上流の奥出雲町にの上荘

スサノオの尊が降り立ったのが、

「出雲の国のの河上(ヒノカワカミ)」。

斐伊川の「ヒー」を思わせる漢字が、

斐伊、斐、簸、肥

この中で、意味がありそうなのがかナァ。

ただ、「」は、川の流域が肥沃な土地になるのは当たり前のこと。

で、ワタシが興味を持ったのは、「」。

辞典で見ると、‘穀物などのゴミやチリ・ヌカを箕でふるって取り除く’、とある。

音は【】で、訓は【・る】。

「ヒ」が音読みだと思っていたので、訓読みだと分かっただけでも収穫。

「ヒー川」は「簸る川」の出雲弁だったのだ、と私的結論。

そう、斐伊川ヒーカワ簸る川だった。

穀物のゴミやヌカを取り除いたり、砂鉄を掬い、純度を高める作業を、

砂鉄を簸るサテツをヒー)」って言っていたに違いない、と自己満足。

たぶん違うだろうけど、素人の特権として勝手にこの説を採用。

 とまれ、ヒー川の水が、古代出雲王国を豊かな国に作り上げ、

やがて天孫族にとって、やっかいな存在と位置づけられ、侵略され、征服された。

時を経て、人が変わっても、水不足なんてことがない出雲平野の風土が、

良く云えば穏やかな、悪く云えば危機意識のない、出雲人気質を醸成し続けるのだ。

いずれにせよ、人間の生活が自然に左右されやすかったその昔でも王国が成り立ったのは、

ヒー川の存在が一番大きいと思う。(3月14日)

さてさて、…

 

 

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