日御碕(ひのみさき)
日御碕は、島根半島の西端に位置する地域の名称で、
日御碕灯台、日御碕神社を知っている人も少なくないだろう。
出雲市内で、「みさき」と言えば、日御碕地域のことである。
灯台と神社は、定番の観光スポットで、訪れる人も多いが、
稲佐の浜から、日御碕に向かう道中にも、
筆投島(ふでなげじま)、礫岩(つぶていわ)。
灯台や神社に周辺にも、
『出雲國風土記』にも記された神聖な島、浜がある。
それらの島や浜は、時代的に見れば、
神社よりも、もちろん灯台よりもずいぶん古いので、
散策して、宿で出雲國風土記を読んでみるのも面白い。
魚釣りが好きだった私は、
灯台を見ると思い出すことがある。
それは、灯台の見える小島で釣りをした帰りのこと。
迎えに来てくれた船頭さんとは、気が合って、
年は離れているが、友人のような関係だった。
実際、その船頭さんは、他の釣り客に私のことを問われると、
「オレの友達だ」と、言っていた。
その日も、「おーい、釣れたかぁ。」というのを合図に、
島から船に歩くように渡り乗って、
船頭さんの横の私の指定席に着くと、
「今日は、いい凪だけん、遠回りして帰ろうや。」と言われ、
しばし遊覧船を楽しんだ。
その時の船頭さんの名言が今も心に残る。
「布施くん、
灯台は、海から見るためにこしらえてあるけんなぁ。
やっぱり、船の上から見んと、イケんなあ。
どおだぁ。いいだろう。」
灯台を右前方に観ながら、船を走らせ、
やがて右後方に置き去るように、灯台の前を通過する。
その間、角度を変えて姿を変えていく灯台に見とれつつ、
「いいねぇ、キレイだねぇ」と船頭さんに応えた。
船のスピードが落ちて、やがて停まると、
灯台の沖の潮に乗って、船が向きを変えていく。
やがて眼に入ってきたのは、
大きな夕日が刻々と落ちていく西の空だった。
海に沈む夕日は、何度見ても見飽きないが、
しだいに赤味を増していく大パノラマは、
夕日の聖地ならではの絶景。
灯台の下に佇む人たちも
夕日からパワーを受け取るようにその場を動かない。
ねぐらに帰るウミネコの声と、
出漁する漁船のエンジン音も忘れてしまうぐらい
夕景に気を取られるのも、たまには良い。
今でも、凪の日は、観光船が案内してくれると聞いた。
令和8年5月
かつらのフセ





