四里四方 (Localism)

風土

郷土って言うと、

北山 2012年2月

町中からでも北山が見える                     それだけで十分緑豊かだと思うのだが、…

ちょっと堅~い気がするけど、

もともと、っていうのは

自然発生的なものだと思う。

愛国心を持ちなさいと言われても

「はい、それではそうします」、

というわけにはいかないし、

自分は愛国心を持っています」、

と振りかざすものでもない。

永らく住んでいる土地や、地域の人に対して、

良いところも悪いところも含めて、

自然に湧いてくる感情がであり、それが動物の正常な本能だと思う。

実際、ワタシはと言えば、出雲の風土が好きである。

でも、都会のまねをしようとしている街の景色は嫌いである。

どこまで行ってもまねはまね、背伸びしても都会になれるわけないのである。

その『開発』を黙って受け入れるしかない出雲の大地を見ると哀れな感じがする。

その出雲が泣いているようで、かえって愛おしく思えてくるのである。

これもかもしれない。

 

出雲を離れて暮らしている時、たまに帰ってくるたびに

出雲の風土を再認識するようになったかもしれない。

大学生の頃、帰省して、母や祖母の魚料理、

近所の魚屋さんで買ってきたブリや、バトウの刺身、焼きサバ、などを食べて、

自然に(じねーんに)魚料理が好きになっていった。

 季節によっては、ボッカやアカミズ、ハゼなどを釣って帰って食べたりして、

「二日くらいおいて食べたほうがおいしい」と聞いていたけど、“釣りたての旨さ”を覚えた。

昔、近所の料亭のオヤジさんが、都会の料理の先生がテレビで

「二日くらい経った時が一番…」と言っているのを聞いて、

「あれは獲りたての魚が手に入らない奴の言い分だ」と言ったのを思い出す。

撮りたてには獲りたての、翌日には翌日の、二日目には二日目の旨さがあって、・・・

スズキのアライは獲りたてじゃないとダメだけんなぁ」って言われて、いっそう説得力があった。

(4月13日)

その後、・・・

 出雲という時空で暮らす

大阪での4年間の学生生活は、

雲見の滝

雲見の滝                           ここでは水の落ちる音しか聞こえなくなる

 

ワタシに自然の魅力を気付かせ、

卒業後、出雲で就職した。

泥臭いこと、遊び、海川遊びが

大好きだったから、休日は、

山や海で過ごした。

とりわけ磯釣りによく行った。

釣るのも面白いが、

釣った魚を食べることが、

ワタシにとっては特に大事で、

ターゲットの魚が釣れるのもうれしいが、

外道と呼ばれるその他の魚でも、

美味しい魚が釣れると、

「どう料理しようか」と考えて楽しい。

今でも、ワタシは月に1~2度磯に出かける。

以前よく連れ立って出かけていた仲間に、

「お前の趣味は磯釣りぢゃなくて、料理だなぁ」

って言われた。ワタシの釣りは魚の仕入れみたいだと言われてみれば、自分でもそう思う。

磯では、まず氷の入ったクーラーボックスに海水を入れる。釣れた魚は、アジも、イサキも、

マダイも、クロも氷で冷えた水の中にそのまま入れる。

その前に血抜きという作業をしたこともある。今でもたまにすることもあるが、

するかしないかで味が極端に違うのは(ワタシの個人的感想として)、

カワハギと、ブリヒラマサぐらいで、

チェリーロード

チェリーロード(松江市)で花見もいい

その3種は必ずやっているけど、

他は、特にしない。

 他人のクーラーボックスに

水が張ってないと忠告する。

 おいしそうな魚が釣れると

顔に幸福感が出るらしい。

時には、

「美味しく食べてあげるから、

      魚も成仏できるね」

 などと言ってくれる人もあるが、

なんのことはない、ただ美味しく食べたいだけ、

ただただ、食い意地がはっているだけなのだ。(4月27日)

ずいぶん前のこと、…

フナムシのささやき

それはもう20年も前になるでしょうか。

鵜峠の漁師さん曰く、

「昔は、『ウド虫一つにクロ一つ』って言うほど

クロアイよぉーけ釣れたのに、最近は釣れなくなった。」

ウド虫とは、フナムシ(海端でよく見かけたゴキブリのように歩くダンゴ虫みたいなヤツのこと)

のことである。フナムシを餌にしてクロアイを釣っていたのだ。続けて、

マツクイ(虫の駆除剤)の空中散布の影響で、

虫(正確には磯棲の節足動物など)がいなくなって、

クロアイが磯際に来なくなった。」と漁師さんは言った。

松の木が多い海岸線にも

赤潮が近づく

毎年春には赤潮が発生

松くい虫の駆除剤は散布され、

多くの生き物が死んだ。

目に見えるものでは、フナムシ

海藻のなかに棲むワレカ

などの節足動物。

それらはみな、クロアイの餌だった。

餌がない磯に近づくことはなくなり、

地磯周りでクロアイは釣れにくくなった。

赤潮接岸

赤潮接岸 決して異常なことではない

漁師さんは、

「昔は、よく灘に近いサザエ網

クロアイが獲れたものだが、

近年は沖のキンチャク(網)で獲れる」

とも言われた。(5月2日)

今では見る影もないが、・・・

 

 食物連鎖

以前、大社は、海岸線にまでクロマツが生い茂り、

日御碕灯台の近くには、『出雲松島』とも形容される景色が

小伊津灘の九右エ門
魚瀬地区に程近い平田地区の磯

 自然のパノラマとでもいうのか、

観る者までも包み込んでいた。

 一方、松江の魚瀬地区は、

雑木に蔽われ、松の割合が少なかった。

クロアイも、大社よりよく釣れ、

フナムシもたくさんいた。

もしかしたら、ここでは、 「駆除剤散布」

行われなかったのだろうか、と想像する。

 

 

 近年、海藻が減ったとよく言われる。

農薬・除草剤が地下水脈を通って

海へ流れ込むからだという説も、尤もだと思うが、

 共生する節足動物・甲殻類などがいなくなったことも追い打ちをかけたように思えてならない。

蛍だけ死なない農薬や、シロアリだけ殺す殺虫剤、そんなに都合の良いものはない。

わが今市町内でも、今も井戸はあるが、くみ上げた水に

シロアリ駆除剤の成分が混入していたと聞く。

戦後急速に普及し、今は当然のように使われる農薬や殺虫剤をそろそろやめて、

前近代的風土作りに切り替えたほうが、結果的に効率的・合理的ぢゃぁないかなぁと、

波間でポカンと浮いている浮子(ウキ)を見詰めながらよく考える。

人が山の手入れをすることからはじめてみる。植生が豊かになり、山の保水力が高まる。

土砂災害の防止にも役立つ。地下水脈が腐葉土の養分を運んで海に滲み出す。

海藻植物プランクトンも増え、魚やその他の水生生物が産卵し、育った小魚や

小さな貝類、甲殻類を食べに大きな魚が来る

自然の生態系が風土とバランスをとるように、

換言すれば、本来の海の姿を取り戻すことになるだろう。(5月16日)

だから、・・・

 

 風土の体質改善

 陸上の生き物である “ヒト” が、海に直接手を加えるやり方は、その場しのぎにすらならない。

例えば、魚の放流事業

クロダイ&メジナ

上がクロダイです

その生涯を過ごす行動範囲が

比較的狭い魚種

クロダイ、ヒラメ、マダイなどが

海の放流魚として有名だが、

彼らは、5~10kmの範囲内で生活し、

その一生を終えると言われている。

今、体長20㎝に育った

クロダイの稚魚を1万尾、

ΟΟΟ幼稚園の年長さんたちが

ÕÕÕÕÕ漁港で放流したとする。

クロダイ1号~10,000号までほとんど大差なく体長20㎝で、餌も同じようなものを食べる。

クロダイは本来、雑食とも悪食とも言われ、いろいろなものを食べるが、

海の中では一年中トマトやキュウリが栽培され、牛乳があり、加工して保存食として、

いつでも手に入るというわけにはいかない。

イカの産卵期に放流されたら、クロダイ1号も2号も3号・・・・・10,000号も

みんなでイカの卵を食べつくす。イカの卵がなくなれば、小さなエビやカニを食べつくす

食べ物がなくなれば、次のエサ場に移動する。

イカの卵が食べつくされるということは、イカがいなくなり、

それはイカを食べるブリなどの大型魚の餌がなくなることを意味する

 数年前、瀬戸内海にサメがたくさん入り、漁網の損壊や、

海水浴場の閉鎖などの被害があったのも、豊後水道にイカが現れず

また、それを餌とするブリの群れもとどまらず、それらを餌とするサメが

空腹に堪えかねて、瀬戸内海へ入ってきたとみる漁業者も少なくない。

当時瀬戸内地方ではクロダイなどをたくさん放流していた。

その後にある釣り愛好者の団体が愛媛県の漁協の人に、放流事業を申し出たら、

「放流はやらなくていい」と断られたと、ある月刊誌で読んだ。

 

大型魚だけではない。

小さなエビやカニが少なくなれば、それを餌とする他の小魚たちも少なくなり、・・・・。

食物連鎖という自然の営み ―生態系― が側面からたたき壊されているようなものだ。

魚たちは絶対数が少なくなったか、或いは、遠くへ行ってしまったのだろう。

沿岸に魚が寄ってこなくなったから、ウキがちっとも沈まない

と、自分の釣りの腕が悪いことを棚に上げて、嘆いてみる。

 放流事業破たんの感を覚えるたびに、

山地の「開発(=自然破壊)」が運よく進んでない島根だからこそ、

対症療法ぢゃぁなく、体質改善的な方法で風土を生かしたらいいのになぁ、と案ずる。

 山の手入れをすれば、春には山菜が、秋には茸が副産物として収穫できるだろう。

実のなる雑木が増え、クマ、イノシシ、シカ、サルなど、いま害獣と称される野生動物も、

人里に出現しにくくなるかもしれない(実際、去年の秋は山の木の実が豊作で、

農作物の被害が少なかったらしい)。

山が地下水脈を複雑にし、保水力を高め、地下水脈を通って、栄養たっぷりの水が

海へと流入すれば、そこには、アオサなどの海藻が繁茂する。

アオサだけでなく、植物プランクトンも増える。

植物プランクトンが増えれば、動物プランクトンや幼生プランクトンが増え、

それを餌にする小魚が・・・・・・・。と、生態系が健全になる。

魚にとって棲みやすい海域になれば、棲みにくくなった海域から魚が集まってくるかもしれない。

夢みたいな考えだけど、海を見つめながら、それが最善策だと、直感するのである

(6月23日)

 

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